Alice by ヤン・シュヴァンクマイエル
昨日は近所のTSUTAYAで旧作半額サービス(ほぼ毎週火曜日)。
妹もいないことだし、普段気になってはいたものの、借りたことのないようなものを借りようと思って、マイナーなものばかり借りてきてみました。
昨夜早速見たのがこちら。
チェコのアニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエル(Jan Švankmajer)監督による1987年の作品、「ALICE(原題『アリスの何か(Neco z Alenky)』)」。
なんでもアヌシー映画祭最優秀長編アニメーション映画賞を受賞しているとか。
DVDのカバーからしてディズニーにはありえない、西洋の童話からかもし出されるダークさがありありと出ております。
そう、ジョン・テニエルの挿絵のような世界。
実写と人形アニメーションによる作品ですが、実写で出てくるのは主人公のアリスと一番最初に1シーンだけでてくるお姉さんのみ。
しかもお姉さんは顔がでてこないので、顔もすべてでるのはアリスだけになります。
とりあえず、シュールでダークでブラックです。
西洋童話の薄暗い部分が前面にでております。
まず、アリスが全体を通して無表情。
キラキラと木漏れ日に輝く小川ですらホラー映画のような印象。
全体的に薄暗く、薄汚れ、寂れた、そしていかがわしい雰囲気が漂っています。
乱雑なヨーロッパの昔の(アリス原作の時代の)子供部屋。
おもちゃすら気持ち悪い。
おもちゃ以外のものも、単なる日常の雑貨ですら気持ち悪い。
時計を持った白兎さんは部屋の隅にある剥製が動き出し、台に打ち付けられていた釘を自ら引き抜き、動いたはずみで裂けた胸(おが屑がぼろぼろ零れ落ちている)に時計を仕舞う。
ついでにおが屑はこの兎さんにとって血液であり、食料でもあります。
食は血となり肉となる。そのままの光景がいまここに。
そして剥製を飾っているガラスケースを叩き割り、「遅れた!」と走り去る兎を追いかけ、アリスは穴には落ちず、引き出しを通って別世界へ。
とにかく、小物も世界も気持ち悪いように気持ち悪いように作られています。
画鋲のジャム。「私をお飲み」とはかかれていないのに体のサイズを変えるためにアリスが飲むのは黒インク(インク壷につけた指がインクで黒く染まる)。骸骨に義眼がつけられた登場人物。等身大のトランプ。人形のままの三月兎といかれ帽子屋は「首をおはね!」で切られた首を付け替える。そういえばチェシャ猫はでてきませんでしたね。
まぁとりあえず一番最初に気持ち悪いのは白兎さんなのですが。
舞台となるのはすべて少女アリスの生活範囲内なのでしょう。
いつもの遊び場。いつもの家。
子供にとってはどこでも冒険の場になるのだな、と遠い記憶が呼び覚まされつつも、夢の中という舞台にいつもの場所がコピーされることによって、まったくの別世界のように少女の目に映っていく。
ディズニーのアリスが童話の楽しげな面だけを前面に押し出し、それをさらにエンターテイメントとして作り上げているならば、こちらは童話の暗黒面をそのまま悪夢の再現のように作り上げられています。
ラストでは子供特有の無邪気なまでの残酷さが。
はっきり言います。
これ、子供が見るものじゃありません。
シュヴァンクマイエルの独特のシュールレアリズムの世界が好きな人でなければ、気持ちが悪く、後味の悪い作品でしょう。
印象深い作品でした。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)


最近のコメント